いまどきの就活事情

先日、業務委託を受けている法人の、わたしが担当して初めての新卒採用試験を行った。
豊中介護施設にて10:00〜実施するということは、事前に個別連絡でアナウンスしていた。



9:45を過ぎたころ、受験予定の男性より、一本の電話連絡が入った。



「 体調不良の為、本日の試験に参加出来ません。朝、熱を測ったら、38度もあって、僕びっくりしたんです。あはは・・・(笑) 可能であるなら、日程変更をお願いしたいです 」



設定された日時、時間に来ることが出来ないという状況になるということは、
縁がなかったという結果なのだが、
事前に連絡があったということと、出来る限り、チャンスを与えてあげたいという気持ちから、特別に、日程を設定することにした。



その日に行う予定だった試験については、滞りなく終了することができ、
受験者の内、数名は、次の段階へ進めそうである。




そして、別の日を設定した男性の試験日。
会場も時間も前回と同じ、日程だけをずらし、
その日に受験するのは、その男性一名のみ。



昼からは、姫路にある大学で開催される就職説明会に参加する予定もあり
時間的に、かなりタイトな中での、実施となった。



「試験会場が、わかりずらい場所にあるから、迷うかもしれない。
施設前で待っていてあげよう」



その親切心からわたしは、施設の入り口付近で待つことにした。



サービス利用する高齢者の方達が、施設バスで次々と到着され
人の出入りも激しくなり、活気付いてきた。



「おはようございます!!」



元気良い挨拶と、とびきりの笑顔で、ひとり、またひとりと利用者を迎える。
まるで、施設長にでもなったかのようだ。



時計に目をやると、すでに10:00を回っている。



「どうしたのだろう??道に迷っているのかしら?」



周辺を見渡してみても、リクルーターらしき人物は見当たらない。



「もしかして、わたしが時間を言い間違えた??
 いやいや、それはない!!
 また体調不良??前回は、電話が入ったし・・・
 でも電話の内容、軽かったしなぁ・・・」



わたしの頭の中で、いくつもの原因が浮かび、渦巻いている。



10分・・・15分と時間は過ぎ。。。。



わたしが入り口に立ち始めてすでに、40分以上となった。
9月中頃だというのに、朝から真夏を思わせる日差しと暑さで
気が遠くなりかけていた。



「こんなことじゃ、待つんじゃなかった」



電話でのやり取りのみで、一度も会ったことのない男性に
半ば、あきらめにも近い感情が湧いてきた。
怒りでない、あきらめである。



「もう・・・最近の子は・・・」




さすがに、見切りをつけ、試験会場の部屋へ戻り
机の配置を元通りにし、時間に空きが出来たので、手帳を見直し、
今後の仕事の予定を立てることにした。



ひと段落ついたころ、ドアをノックする音がした。
施設の受付事務の女性だった。



「採用試験を受ける予定の男性が来られました」



「はぁ〜????」



時計を見ると、10:45を回っている。



一瞬 「お帰りいただこうか?」とも思ったのだが、
エントリーシートに書かれている、学歴(京都の有名大学)、見事な志望動機と
約束を守れない行動をするその人物像がどのようにリンクしているのか??
逆に、その本人を見てみたいような気持ちになり、興味本位で会ってみることにした。



黒のスーツに身を包み、入り口に立っている、その男性は、わたしの抱いていたイメージとは反し、至って普通だった。
しいて言えば、左足の靴ひもが解けているぐらい。


「ふっ、普通すぎる・・・」


当たり前のように、挨拶を交わし(軽めに)当たり前のように、通された席に座る。



「わざわざ日程を変更いただき、ありがとうございます!!
いやいや、その前に、今日は遅れて申し訳ございません・・・とかはないの??」



わたしの心の叫びが聞こえたのだろうか?
席に着いた男性からの最初の一言は
「これである↓↓」





「あ〜っ、シャーペンの芯がないので筆記用具、借りたいんですけど。
あと、消しこむも」





「・・・少々おまちください」



受付事務所に、筆記用具を借りに行くわたしの後ろ姿は
さぞかし、物哀しさで溢れていただろう。



この男性とは、それっきりになってしまったことは言うまでもない。



40分以上も遅れて試験が始まり、お昼ひるご飯を食べることも出来ず、
モヤモヤした気持ちのまま、わたしは、次の仕事へ向かうのだった。




「こういう疲れって、後に引くのよね〜・・・ふぅ。。。 」